新潟から世界を捉え、21世紀の美術を考える
大地の芸術祭公式WEBマガジン

観光 / 越後妻有を巡る

雪とアートと文化に触れる。
「越後妻有2024 大地の芸術祭 冬」始まりました!

 

19 January 2024

日本有数の豪雪地帯である越後妻有では、一年のうちの約半年間、雪が街を覆います。 ここで暮らす人々と同様に、大地の芸術祭の作品もまた雪の中を生きています。 アートを巡り、自然に触れ、冬の越後妻有を満喫できる冬プログラム「 越後妻有2024 大地の芸術祭 冬」の楽しみ方をご紹介します。

越後妻有ぐるっと1日で巡る

関東方面から高速道路を抜けて、あるいは越後湯沢駅から一番近い距離にある作品が、「Tunnel of Light」(清津峡渓谷トンネル)です。

駐車場からトンネルまで向かう道中の日本三大峡谷の眺めは絶景で、谷を流れる清津川、雪が被さった柱状節理の岸壁は水墨画を連想させます。トンネル内部の見晴所からはより近くで岩肌をご覧いただけます。静かに振る雪と、ごうごうと流れる川の音のコントラストもまた自然の美しさを一段と引き立たせます。トンネル入口から歩くこと約15分。暗がりを歩いた先に突如現れるパノラマステーションでは、雪の白さが眩しく視界に入ります。人が少ないこの時期だからこそ、ゆっくりと景色をお楽しみいただけるのもポイント。思い出の1枚を撮影してみましょう。

マ・ヤンソン/MADアーキテクツ
「Tunnel of Light」(清津峡渓谷トンネル)

越後妻有里山現代美術館MonET

清津峡から車で30分ほど走った十日町の市街地では、越後妻有里山現代美術館MonETの冬の企画展が待っています。

 

Photo by Nakamura Osamu

連続企画展Vol.4 田中藍衣
「リバース ストリング」

昨年の夏から続く連続企画展シリーズの4回目となる今回は、「リバース ストリング」と題し、作家に田中藍衣さん、ゲストキュレーターに檜山真有さん(キュレーター/リクルートアートセンター)を迎えました。田中さんが用いる岩絵具は、鉱石を砕いて粒子状にした画材です。石の肌ざわりが残った、ざらざらとごつごつとした質感の中には煌めく粒も。観る位置や角度、展示室に差し込む陽の光の加減によって作品の印象も変わるでしょう。館内をぐるっと一周した最後に、もう一度観るのがおすすめです。2Fへ続く階段に隣接した大型の絵画は、よく見ると6枚を組み合わせた大きな絵が並んでいます。

公開日:1/13 (土)~3/10(日)の火水以外

1/24には作家の田中さんと一緒に美術館の一角に大きな抽象絵画をつくるワークショップを実施します。詳細はこちら

Photo by Nakamura Osamu

中央:田中藍衣 右:檜山真有  Photo by Nakamura Osamu

Photo by Nakamura Osamu

鈴木康広「水平の人|雪を見る」

冬の企画展、鈴木康広「水平の人|雪を見る」では、MonETの池に”雪を待つ”巨大な人が出現します。作品の目線をたどりながら、白くて高い空から振る雪を観ることで、一つひとつの形や大きさの違いに気づきます。柔らかい雪が、何メートルにも積もる自然の神秘も感じられるでしょう。

回廊頭上に点在する小さな人は、空を見上げているようにも宙に寝そべっているようにも見えます。館内外の好きな場所から、自分だけの見え方を探してみてください。

公開日:1/20 (土)~3/10(日)の土日祝

 

 

Photo by Nakamura Osamu

冬のあそび場

昔の除雪道具「こすき」で羽根つきをする、「ハネッケーシ」という越後妻有の小正月遊びを行います。大きなこすきに小さな羽を当てるのは以外に難しく、大人も子どもも大盛り上がり。2/3(土)、17(土)、24(土)、3/2(土)には、汁物やお餅をふるまう地元集落の食のおもてなしも実施。地域の季節行事に触れながら、身も心も温まることのできるイベントです。

公開日:1/13 (土)~3/10(日)の土日
※1/13,14,20,21のハネッケーシ体験は小雪のため中止となりました

Photo byYanagi Ayumi

まつだい「農舞台」フィールドミュージアム

MonETから車で20分、いくつかのトンネルを抜けると、まつだい「農舞台」に到着します。この農舞台を含む周辺一帯を”まつだい「農舞台」フィールドミュージアム”と呼びます。グリーンシーズンに作品が点在していたエリアには、「里山雪の遊園地2024」が出現。遊ぶも良し、観るも良し、食べるも良しの盛り沢山な内容で、地元のお父さんたち「案山子隊(かかしたい)」がこの冬を熱くします。

「里山雪の遊園地2024 」
~豪雪の里山で遊んであたたまろう~

案山子隊の掛け声とともに、雪の坂を勢いよく滑るスノーチューブは見た目以上のスピード感。雪が振る日は、坂は砂糖のようなパウダースノーとなります。ドーナツ型のチューブが滑る姿を切り取ると、お菓子の国のようにも見えます。

遊園地内では、かまくら作りや雪遊びもでき、小さい子どもたちの賑やかな声が響きます。思い思いに雪を楽しむ様子を眺めながら、大人は焚火コーヒーで至福のひと時を。

小腹が減ったら、おもちや焼きマシュマロでおやつ休憩はいかがでしょうか。

公開日:1/13 (土)~3/10(日)の土日祝

遊園地内に並ぶベンチ。実はこちらもアート作品です。そり状の脚をした「フィールドミュージアムのためのfurniture『sledding bench』」は、季節を問わずご覧いただける作品ですが、雪の上で腰掛けることで特別な座り心地を味わえるかも…?

ドットアーキテクツ「フィールドミュージアムのためのfurniture 『sledding bench 』

農舞台の横に佇むのは、四方謙一さんの「この地に生える」。晴れた空、雪が降る空、積雪の高さ、日ごとに表情を変える里山の冬景色を作品越しに感じられます。風で揺らめく鏡面と景色が重なることで、幻想的な空間を生み出します。

他にも、冬のフィールドミュージアムでは「〇△□の塔と赤とんぼ」「西洋料理店 山猫軒」などの屋外作品も公開中。雪上を歩いてやっとのことで辿り着く作品から、自然の中で生きるたくましさに直に触れられるのがこの季節ならではの感動です。

 

四方謙一「この地に生える」

松代から、松之山方面へ

松代から越後湯沢方面へ帰る道中では、「最後の教室」、「『森の学校』キョロロ」、美人林がある松之山を通ります。越後妻有の中で、最も雪が降ると言われているのがこの松之山です。

最後の教室の作家 、クリスチャン・ボルタンスキーが作品制作のために現地を訪れたのは、記録的な大雪となった2006年の冬でした(記録によると4.6m、一軒家の1階がすっぽりと埋まる高さです)。雨と違って、静かに降り積もる雪の静けさを、閉校となった学校に閉じ込めたのかもしれません。

公開日:1/13 (土)~3/10(日)の土日祝

クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン「最後の教室」ph T.Kuratani

キョロロでは、「学芸員・研究員が紹介したくてしかたがないスノウリッチ*とおかまち」「美人林ものがたり」の2つの企画展を開催中。期間限定でレンタルを行っているスノーシューで周辺の散策をすることもできます。

手塚貴晴+手塚由比「越後松之山『森の学校』キョロロ」

暖冬と言われている今年ですが、それでも膝丈ほど雪が積もるこの地域。コントロールの効かない自然の中で、降雪状況によって景色が変われば、作品の印象も変わります。一日の中でも朝と夕方、同じ季節の中でも1月と3月とでは、見えるものが違うでしょう。
1/13(土)から始まった
「越後妻有2024 大地の芸術祭 冬」。冬のプログラムを通して、この季節だけの自然とアートをお楽しみください。

自家用車がない方、雪道の運転が心配の方には、越後湯沢駅発着のオフィシャルツアーがおすすめです。7月から開催するトリエンナーレのプレイベント、田中泯による「雪の良寛」鑑賞つきの特別なツアーもございます。

募集中のツアーはこちら
https://www.echigo-tsumari.jp/visit/v_category/tour/

 

雪降る越後妻有から、皆さんのご来場をお待ちしています。

開催概要

「越後妻有2024 大地の芸術祭 冬」

日時

2024/1/13(土)-3/10(日)
※企画展やイベント内容により異なります

場所

  • 越後妻有里山現代美術館MonET
  • まつだい「農舞台」フィールドミュージアム
  • 最後の教室
  • 光の館
  • 越後松之山「森の学校」キョロロ
  • 清津峡渓谷トンネル
  • 野外作品

料金
冬の共通チケット
一般2,000円、小中800円(有効期間:2024/1/13-3/10)
※各施設の個別鑑賞券もあ

冬もサポーター大募集!

募集概要

妻有に足を運ぶ皆さんの、この冬の思い出を私たちと一緒につくりませんか? 私たちと一緒に運営のお手伝いをしてくれる「こへび隊」も募集中です
各施設・プログラムの準備や片付け、当日の運営をお手伝いいただきます。 活動の詳細は、サポーター募集ページよりご確認ください。

https://www.echigo tsumari.jp/news/20231216/

テキスト: 髙橋咲希(NPO法人越後妻有里山協働機構)

つながる

最新ニュースやイベント情報、越後妻有の四季の様子、公式メディア「美術は大地から」の更新情報などを大地の芸術祭公式SNSアカウントで発信しています。