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雪の舞う、冬の越後妻有へ!バスで巡る雪とアートの旅

大地の芸術祭、夏には行ったことはあるけれど、冬はまだ体験したことがないという方も多いのではないでしょうか。越後妻有の真骨頂は、冬!圧倒的な雪景色とアートのコラボレーションや、雪の恵みから生まれた豊かな文化に触れられる冬の訪問もおすすめです。

20 December 2022

真っ白な世界を彩るアート

越後妻有は人口5万人規模の都市では世界一雪が積もるともいわれており、積雪は3mを超えることもある日本有数の豪雪地帯。東京23区よりも広大なフィールドには300以上のアート作品が点在し、作品は道しるべとなって、お客さんを集落へと導きます。
そんな、雪とアートが融合し越後妻有らしさ全開となるのが1月~3月です。

ミルフィーユのように重なった雪壁の断面、屋根の上にきのこのようにこんもりと積もった風景は、自然が織りなすアート作品のようです。

ジョゼ・デ・ギマランイス「イエローフラワー」

冬に行ってみたいけれど雪道の運転が心配…という方におすすめなのが、バスで巡るガイド付きオフィシャルツアー。目線と同じ高さまで積もる雪壁を車窓から眺めながら、安心してゆったりと作品巡りを楽しんでいただけます。

今年の冬は、越後湯沢発着で日帰り・1泊2日の2つのオフィシャルツアーが運行します。こちらの記事では、1/28(土)~ 3/11(土)の毎週土曜に運行する「五感で味わう!雪見御膳&SNOWARTツアー(日帰り)」と、MonETや農舞台で開催する特別企画展をご紹介します。

旅の出発は、越後湯沢

「トンネルを越えるとそこは雪国だった」その言葉の通り、車窓の景色ががらっと変わり、雪国の玄関口となる越後湯沢。新幹線を利用すれば、東京から1時間半ほどで到着するので、実は日帰りでも十分楽しめるんです。

十二峠を越えて走ること約40分、まず最初に訪れるのは、十日町エリアの越後妻有里山現代美術館「MonET」。大地の芸術祭の中心となる施設です。グリーンシーズンには、キラキラと輝く水面に青空を映し出したMonET中央の池は、冬は真っ白な雪原に変わり、新たな一面を魅せてくれます。

1月14日から始まる冬プログラムでは、館内の常設展に加え、雪の魅力を再考すべく4組のアーティストを迎えた企画展を展開します。これまでMonETを訪れたことのある方も、季節ごとにさまざまな表情を魅せるMonETをぜひご体感ください。

左上:加藤ユウ(Photo Yu Kato)/右上:小松宏誠(Photo Shin Inaba(c) Kosei Komatsu at 金津創作の森美術館)/左下:本郷芳哉(Photo Fumihito Nagai)/右下:持田敦子(Photo Tatsuyuki Tayama)

食こそアート。お昼は集落でいただく「雪見御膳」

雪見御膳とは、地域の知恵と文化がつまった越冬料理を集落のおもてなしで楽しむ特別な食のプログラムです。自然とともにある暮らしの中で生まれた生活文化こそアートと捉え、2014年の冬以来、たくさんのお客さんをおもてなししてきました。

越後妻有にある200以上の集落は、長い冬を越えるための生活の知恵が受け継がれ、独自の文化を育んできました。貯蔵などの越冬料理もそのひとつ。集落のお母さんによって丁寧に作られた手料理を、かつて集落内の冠婚葬祭で使われ大切に保管されていた漆器でいただきます。

訪れる集落はツアー直前までのお楽しみ。地域の中で集いの場として使われてきた場所や歴史ある古民家など、会場も集落によってさまざまです。想いのつまったお料理もさることながら、雪見御膳の醍醐味はお母さんとのおしゃべりの時間。集落のお母さんたちによるおもてなしには、お腹も心もいっぱいになるでしょう。

Photo Nakamura Osamu

近年はコロナ禍で実施をできない年や訪れる集落が限られる中での実施でしたが、今年の冬はツアー限定で実施することが決まり、協力いただく多くの集落のみなさんとともに準備を進めています。遠くからのお客さんが来てくれることを楽しみにしているお母さんたちが、今年もとびっきりの笑顔で迎えてくれるでしょう。

大人も子供も、思いっきり雪あそびを満喫!

お腹がいっぱいになったら、松代エリアの拠点施設、まつだい「農舞台」フィールドミュージアムへ向かいます。

農舞台には冬の里山を舞台に遊園地が出現!
雪道を探検しながら作品を鑑賞したり、まつだい周辺で活躍する里山の師夫・案山子隊が案内する雪上バナナボートなどの乗り物で遊んだり、会期中はミニイベントも多数開催。疲れたらコーヒーとお餅でひと休みできるコーナーもご用意しています。

Photo Nakamura Osamu

作家の気持ちに想いを馳せる

そして、使われなくなった学校全体が作品となった「最後の教室」へ。2003年に同じ場所で作品を展開したクリスチャン・ボルタンスキーが、再度制作のために現地を訪れたのは、記録的な大雪となった2006年の冬だったそうです。夏とまったく違う景色から、約半年間深い雪に閉ざされる静かな空気を実感し、廃校となった空間に表現した作品となりました。

ボルタンスキーがここに足を運んだときに、どんなことを感じたんだろう?と思いを馳せる鑑賞体験は、夏とはまた違った印象を与えてくれるかもしれません。

「最後の教室」が展開されている、旧東川小学校

クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン「最後の教室」photo T.Kuratani

最後は17時頃に越後湯沢駅で解散。日帰りでの参加もできますが、せっかくなら温泉に浸かってゆっくりと旅の疲れを癒すのもおすすめです。

1日では物足りない!という方には、こちらの1泊2日ツアーがおすすめ。これらに加えて、松之山の三省地区で五穀豊穣を祝う小正月行事「鳥追い」や「どんど焼き」に参加し、廃校を改修した大地の芸術祭の宿泊施設「三省ハウス」に滞在するプランです。

芸術祭への愛がたっぷりのガイド

そして、オフィシャルツアーの魅力はなんといっても、ガイド!
芸術祭をこよなく愛するボランティアサポーターやスタッフがみなさんを1日ご案内します。車中でガイドのお話に耳を傾けると、ひとりでは見逃してしまう作品も、車窓からしっかり見つけられます。

photo Nakamura Osamu

ガイドとして活躍する石井さんは、東京に暮らしながら越後妻有へ何度も足を運びながら学びを深め、ボランティアガイドとしてお客さんをご案内しています。

「ガイドさんが一番楽しそう」とよく言われるんです。一日ご案内したお客様から、「楽しかったです。また来ます!」と声をかけていただいた時は、とても嬉しい気持ちになります。現代アートについてお客様とともに考え、ともに楽しみ、ともに面白がれるようなガイドになりたいと思ってご案内をしています。

やわらかな表情からは、お客さんとの交流を心から楽しんでいる様子が伝わってきます。そして実際にツアーに参加したお客様からはこんな声が寄せられます。

ガイドの方の、妻有への思い入れが伝わって来て、地域の自然や暮らしが少しでも理解ができたように思います。単に現代美術鑑賞をするのでなく、地域の自然や人とのつながりで、その場所全体で味わう、体感するという楽しい体験ができました。

ボランティアガイドさんが、いかにこの芸術祭を愛しておられるのかを感じることができて、感銘を受けました! 過疎高齢化が進む自然に恵まれた地域ならではの芸術祭であることも強く感じました。

ツアーに参加いただくのは、初参加の方から5回以上も足を運んでいるリピーターの方までさまざま。大地の芸術祭は、作品の意味や背景などアートの知識がなくても五感で楽しめることが魅力ですが、ガイドのお話で作品の背景に触れることで、今まで観てきた作品を少し違った角度から楽しめることでしょう。

例えば、こちらの作品は雪の中でたたずむ姿がなんとも愛らしい「帰ってきた赤ふん少年」。地域に愛され、守られてきたストーリーがぎゅっとつまっている作品なんです。

訪れたときには、どんな作品なのかぜひガイドとお話してみてくださいね。

関根哲男「帰ってきた赤ふん少年」photo Nakamura Osamu

越後妻有の冬はただ美しいだけではなく、四季の移り変わりの中でしなやかに生きてきた人々の強さも感じさせてくれます。そして雪景色に着想を得てつくられるアート作品は、 この場所にあるものを磨き 、表現することの素晴らしさを伝えてくれているような気がします。

ぜひこの機会に、雪景色とアート、そしてあたたかい集落の人と触れあえる冬の越後妻有にお越しください。

テキスト:佐藤あゆ/NPO法人越後妻有里山協働機構

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