特集 / ディレクターズコラム
4月29日から145日間にわたる「越後妻有 大地の芸術祭 2022」が開幕。それにあわせて、今回の新作や見どころや”あれこれ”を、総合ディレクター・北川フラムが綴る新連載「大地の芸術祭あれこれ」がスタート。
文:北川フラム
12 August 2022
8/7、三省ハウス(旧松之山町立三省小学校)の体育館で展開しているOngoing Collectiveの作品を見に行きました。小川希さんが中心のコレクティヴで、2017年の奥能登国際芸術祭では一人ひとりが力のある作品をつくってくれました。今回は19組が体育館でスゴロクをするのですが、一人ひとりの作品が体育館のなかに別々に林立しているようだった。中に耕地をもちこんでいる作家もいれば、お婆さんの聞き書きを読み、その一枚一枚を集めて本をつくるワークショップ付きなのもある。ゆっくりと楽しんだらいいのだろうが、私はそれが出来なかった。残念。
Ongoing Collective「Ongoing Village〜進行形の村〜」
松代は城山のいけ花作家の作品を見て回った。それぞれ力作なのだろう。経営位置、随類賦彩(※)で止まってしまうという現代いけばなの課題はなかなか乗り越えにくいのかと思ってしまった。その中では、かとうさとると大塚理司の作品は林の中という場をうまく捉えていて面白かった。
大塚理司「王国」(妻有いけばな回廊)
かとうさとる「妻有でヒミツ基地」(妻有いけばな回廊)
私はここから一転して当間高原で行われるFC越後妻有の北信越リーグ2部の試合の応援にかけつけた。相手は「富山レディース」。強敵だ。30分間、攻勢なのだが0対0のまま、上郷クローブ座で上演される越智良江の津南町オリジナル歌劇「あしたの あしあとと あしおとと あたし」の観劇に向かったところ、立て続けに3ゴールしたとの連絡である。
【2022北信越女子サッカー2部リーグ】FC越後妻有vs富山レディース/5-0でホームゲーム戦を勝利
それはともかく、1年生から6年生まで15人登場のこの劇はとても面白い。2日間150人満席とのことである。ラップから始まってダンスは3種類か、歌もキャンディーズの「もうすぐ春ですね」や山口百恵の「秋桜」、「上郷中学校校歌」など数曲。転換もスピーディーで50分間見飽きるということがない。2ヶ月でよくここまでになったと感嘆。越智さんは凄いぞ。劇場全体をうまく隙なく使っていて、津南の大人も子どももこんな充実した空間は初めてみたのではないかと思いました。時々あることだが、やれてよかったと涙が出そうにさえなりました。
北川フラム
越智良江「あしたの あしあとと あしおとと あたし」photo Nakamura Osamu
越智良江「あしたの あしあとと あしおとと あたし」photo Nakamura Osamu
※「六法」の言葉(中国南北朝時代の『古画品録』における、絵画制作の6つの要点)。
経営位置」は構図をしっかり決めること/「随類賦彩」は対象に従って色をつけること