新潟から世界を捉え、21世紀の美術を考える
大地の芸術祭公式WEBマガジン

物語 / 私と「大地の芸術祭」第1回(後編)

芸術祭とみんなの「心の距離」を縮めたい

モデル / 「大地の芸術祭」オフィシャルサポーター 田中里奈

モデル / 「大地の芸術祭」オフィシャルサポーター

田中里奈さん

「大地の芸術祭」を支えてくれる方々に、その魅力を語っていただくインタビュー連載。今回のゲストはモデルの田中里奈さんです。前編では「みんなと同じ答え」を探すのではない、自分らしいアートの楽しみ方を、お気に入りの作品と共に勧めてくれた彼女。後編では、「大地の芸術祭」オフィシャルサポーターとしても活動する田中さんに、この芸術祭を満喫する秘訣を伺います。

テキスト:中島晴矢 撮影:豊島望 編集:内田伸一、宮原朋之(CINRA.NET編集部)

12 November 2019

「心の距離」を縮めるオフィシャルサポーターの役割

ファッションモデルとして多方面に活躍する田中里奈さんは、「大地の芸術祭」のオフィシャルサポーターも務めています。具体的にどのような活動を? と聞くと、「特に決まりはないんです」と田中さんは笑います。

各々ができることをやっていますね。私の役割は、若い女の子たちにこの芸術祭の魅力を伝えていくことだと思っています。SNSで発信したり、ツアーを組んでファンと一緒に現地を回ったり。私の活動をきっかけに、芸術祭に訪れてくれたという子たちもたくさんいて、それは嬉しいですね。大切なのは「心の距離」だと思うんです。いくら現実的に行ける距離だとしても、心の距離が遠ければいつまでたっても足は向きません。でも、身近な人が行っていると、心の距離が縮まりますよね。他人ごとから「自分ごと」にできる。彼女たちにとって私がその「身近な人」になることが、私なりのサポーター活動だと思っています。

今後もオフィシャルサポーターとしては、計画的に「これをやるぞ!」というより、出会いを大切に、その時その時で面白いと感じることを選択していきたい、と語ってくれました。

2018年に地元紙の『新潟日報』で連載されたInstagramの写真投稿キャンペーン「ココロ・ウゴク・ツマリ」は、企画から一緒に考えさせてもらいました。ただ自分がやりたいことをやるというよりは、いただいた機会の中で最高のものを作りたいんです。アーティストの皆さんも越後妻有では、この場所だからこそできる作品を作ることが多いですよね。私もその時その場所での巡り合わせを大事にしていきたいです。

「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018」での写真投稿キャンペーン「ココロ・ウゴク・ツマリ

その上で、多くの人にとって「大地の芸術祭」をより親しみやすいものにしていきたいと彼女は続けます

「大地の芸術祭」って、そのネーミングや開催場所からくる「おごそかなイメージ」もあるけど、皆がもっと気軽に訪れるようになったらいいなと思う。もちろん、山深い地だからこその魅力はたくさんあります。でも、みんなが「フジロック行くぜ!」って言うのと同じようなテンションでこの芸術祭に訪れてほしいと思うんです。実はどちらも、開催地は同じ新潟県。「フジロックもいいし、こっちに行けばすぐ芸術祭だよ!」って伝えたいな。

楽しむ秘訣は「自分から動く気持ち!」

ここで改めて「この芸術祭の魅力とは?」と直球の質問をすると、田中さんは「何よりも人生に彩りを与えてくれる体験が得られること」だと語ります。

「大地の芸術祭」に行くと、「フラットな自分」でアートと向き合えます。たぶん、いつもの生活の場じゃないことが大切なんだと思う。近すぎも遠すぎもしない、ちょっとした小旅行。行き帰りの移動も含めたそんな時間が、普段の思考回路を取り払ってくれて、旅そのものがまるでプロローグとエピローグがある物語みたいになる。帰り道では、一つひとつの作品に寄り添う記憶を思い出します。それは例えば、移動中に出会った人や途中で降られた雨といった、いろいろな経験です。作品の鑑賞体験だけじゃなくて、その周りに付随する思い出も一緒に持って帰ることができるというのは、この芸術祭の大きな価値ですよね。これからも私は、自分にとってのそうした「特典」をたくさん集めていきたいです。

そんな思い出深いエピソードの一つとして田中さんが挙げたのは、冬の越後妻有ツアー限定の郷土料理プログラム「雪見御膳」。「料理をふるまってくれる地元のおばちゃんたちがすごく優しくて、まだ食べ終わってないのに、どんどんおかわりを持って来てくれるんです。もう、おもてなしの暴力ですよ」と笑顔がこぼれます。

「雪見御膳」は冬の越後妻有ツアー限定の郷土料理プログラム(撮影:中村脩 )

最後に、「大地の芸術祭」を楽しむ秘訣を教えてもらいました。

地元の人たちや越後妻有という土地と関わるも関わらないも、そこは好き好きだと思います。でも、関わってくれるはず、楽しませてくれるはずだって受け身で期待せず、自分から関わろう、楽しもうという能動的な気持ちで行ったら、絶対楽しいと思う。そして、それさえあれば、期待以上のものがきっと返ってくると思います。

まず自分自身が目一杯に楽しんで、その楽しさをまわりに伝えていくこと。そんな田中さんのポジティブな魅力は、これからも芸術祭を華やかにサポートしてくれそうです。

Q1. 思い入れのある作品は?

ニコラ・ダロ「上郷バンドー四季の歌」(2018年)

スケールの大きな屋外作品も魅力のこの芸術祭で、マニアックなセレクトと言われそうだけど(笑)、初めて出会った時からずっと見入ってしまいました。もしも叶うなら家にほしいくらいに惹かれた作品です。

上郷バンドの演奏“波打つ霧”を見る
CD『上郷バンド−四季の歌』(越後妻有オンラインショップで見る)

撮影:木奥惠三

Q2.あなたにとって「大地の芸術祭」とは?

普段の生活の中で演じている「肩書き」や「役割」を取り払って、純粋にひとりの人間としていられる、心の故郷みたいな存在。

物語

記事一覧

つながる

最新ニュースやイベント情報、越後妻有の四季の様子、公式メディア「美術は大地から」の更新情報などを大地の芸術祭公式SNSアカウントで発信しています。