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松代城山・田んぼの新しいスタート

27 April 2020

アートの里ではじまる「農業×サッカー」の米づくり

今年度からFC越後妻有の選手が6名に増えたことをきっかけに、私たちFCのメンバーは、まつだい「農舞台」に隣接する山、「松代城山」の田んぼの耕作を担当することになりました。城山は、大地の芸術祭の代表作品、イリヤ&エミリヤ・カバコフ「棚田」の作品など、アートが点在する山として有名です。また、サンショウウオやアカガエル、アカハライモリ、モリアオガエル、サワガニなど、絶滅危惧種を含めた沢山の生き物が生息しています。

私達は今回、「栽培期間中農薬・化学肥料」を使わずに耕作を行うことにしました。この方法を選んだということは、つまり普段よりも手間をかけてお米を作るということです。

理由は二つあります。ひとつは、生き物達を守ることに繋がるから。もう一つは、より美味しいお米を作りたいからです。今回は、そんな現場から、いくつか作業の様子を写真とともにレポートしたいと思います。

播種(はしゅ:種まき)に使用する種籾(たねもみ)を乾燥させている様子。

水の確保と苗作り

私たちのお米作りは雪解けと共にスタートします。

まずは田んぼの水の確保です。私たちが耕作する田んぼは、雪解け水と雨水を利用した天水田です。稲の成長には水が最も重要と言ってもいいので、水管理は細めに行います。

水管理と並行して、苗作りが始まります。まつだい棚田バンクでは、苗を自分達で作っています。苗の良し悪しでその年のお米の良し悪しが決まるのでより慎重に大事に苗作りを行います。

今年初めて苗作りを行った4人の選手は、農業が始めてなので想像以上の苗の枚数と苗一つひとつの重さに苦戦していましたが、自分達が作った苗に愛着が湧き、今からどのように成長していくのか楽しみになったと満面の笑みで話していました。

水管理の様子。

苗を育てる場所へ苗を移動している様子。

芽が出たての苗。

サンショウウオの卵を救出

つい先日サンショウウオの卵を、田んぼから安全なため池に保護しました。救出したのはクロサンショウウオという種類で、準絶滅危惧種に指定されている貴重な生き物です。30個の卵のお引越しです。引っ越し先は、私たちが耕作するカバコフの田んぼのすぐ近くなので、私たちもこれから農作業の時に、気軽に様子を見ることができるようになりました。サンショウウオの成長が楽しみです。

透明容器に入っている白い玉が、サンショウウオの卵

さて、いかがでしたか?私たちの現場での様子が伝わったでしょうか?

「米」という字は「八十八」という文字から作られたと言われています。お米ができるまでに八十八回もの手間がかかるという意味です。

松代のお米が美味しい理由は、手間をかけて作っていることはもちろん、雪解け水と雨水を利用しているということと、夏季の昼と夜の温度差だと教わりました。毎日勉強・毎日挑戦の日々ですが、美味しいお米作りを目指してこれから頑張りますので、今後も見守っていただけたらうれしいです。

 

2019年、稲刈り後のカバコフの棚田の様子。

FC越後妻有

女子サッカー選手が移住・就農、プレーしながら棚田を保全。

「FC越後妻有」は、女子サッカー選手が棚田の担い手として移住・就農し、プレーする農業実業団チーム。大地の芸術祭から派生した本プロジェクトは、プロとしてサッカーをしながら、里山で暮らすライフスタイルの提案であり、過疎高齢化で担い手不足の棚田を「まつだい棚田バンク」を通して維持する、日本全国見渡しても類を見ない、先駆け的なプロジェクトです。 近い将来でのなでしこリーグ参入を目指します。

テキスト:まつだい棚田バンク・FC越後妻有 西川美里

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