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大地の芸術祭公式WEBマガジン

観光 / 越後妻有を巡る

ガイドが作品や地域、芸術祭について丁寧にご案内します

「大地の芸術祭」は一年を通してオフィシャルツアーを開催しています。今回参加したのは、ガイド&ランチ付きの日帰りバスツアー。20年にわたる「大地の芸術祭」をプレイバックする、魅力たっぷりのツアーの様子をご紹介します。

テキスト・編集:西川まゆ(アソビュー) 撮影:矢野剛士(アソビュー)

26 September 2019

旅の出発点「越後湯沢駅」に到着

東京駅から新幹線で約90分。思った以上に近い新潟

東京から上越新幹線で約90分。今回の旅の出発点「越後湯沢駅」に到着しました。

「大地の芸術祭」の会場である十日町市まではここから車や鉄道などを使いますが、バスツアーは「越後湯沢駅」発着なので移動もスムーズ。都心からの日帰り旅行にもぴったりです。

越後湯沢駅から出発するので、無駄なく時間が使えます

車窓からの眺めを楽しめるのも、バスツアーならではの魅力

駅の東口からバスが出発。車内では地元のベテランガイドさんが解説をしてくれます。十日町市の歴史やエピソードに耳を傾けながら、リラックスムード。車窓からの景色を眺めつつ、のんびり旅を楽しみます。

ツアーだけの限定公開作品も。里山をめぐるアートの旅へ出発!

マ・ヤンソン / MADアーキテクツ「Tunnel of Light」

日本三大渓谷のひとつで、上信越国立公園に指定されている「清津峡」がアートに

まずは最初の目的地、清津峡へ。渓谷を見るために掘られた観光トンネルが、2018年のトリエンナーレでマ・ヤンソン率いる中国の新進気鋭の建築ユニット、MADアーキテクツによってリニューアルされました。入口にはトンネルを掘った時に湧き出た温泉を使った足湯やカフェもあります。作品「Tunnel of Light」は、この足湯のあるエントランス施設から、パノラマステーションまで清津峡渓谷トンネル内のすべてを含めてひとつのアートとなっています。

人気のアートなので、休日には駐車場を待つ列ができることも多いのだとか。訪れた日も少し列ができていましたが、ツアーは優先してもらえるので待ち時間も短め。効率よく人気作品を回れるのもバスツアーの魅力です。

夏の暑さにひんやりした空気が心地良いトンネルの中。

ほの暗いトンネルの入り口に立つと、これから何かが起こりそうで胸が高鳴ります。トンネルの中はひんやりしていて、外とは別世界。ぼんやりと壁を照らす照明に、どこからか聞こえる不思議な音。作家のマ・ヤンソンが、作品を”旅”と表現したのもうなづけます。

途中の見晴らし台。ひとつひとつが違うテーマでつくられています

パノラマステーションの先端へ。渓谷の水はキーンと冷たくて気持ちいい!

途中の見晴らし所からは、ゴツゴツした岩肌に鮮やかな緑が映える清津峡渓谷が。

20分ほど歩いて終点のパノラマステーションに到着します。水鏡に映ったトンネルと渓谷がつくりだす空間は絶好のフォトスポット。季節によって色々な表情が見られるそうなので、また来ようと心に誓って清津峡を後にします。

磯辺行久記念 越後妻有清津倉庫美術館[SoKo](2017)

作品に到着したら自由行動でOK。自分のペースで鑑賞できます

名前の由来にもなっている<SOKO>の中にはさまざまな作品が

次に向かったのは「磯辺行久記念 越後妻有清津倉庫美術館[SoKo]」。ここは、旧清津峡小学校をリニューアルした、「 展示しながら、保管する」という新しい発想の美術館です。信濃川がテーマの「川はどこへいった」4部作や「土石流のモニュメント」など、 土地の特色を視覚化する磯辺行久氏の作品を軸に、たくさんの作品が展示されています。

白を基調にした館内を散策

こんな写真も撮ってみました。ちょっとアーティスト気分

広々とした倉庫に並ぶ作品たちは、どこを切り取っても絵になる佇まい。新潟の暮らしや文化を思い描きながら、じっくり鑑賞したいスポットです。

まつだい「農舞台」

ほくほく線が通るまつだい駅にほど近い場所。レトロな電車も可愛らしい(撮影:中村脩)

参加型のアートがたくさんあるのも、大地の芸術祭の特徴。教室全体が黒板になっていて、自由に絵を描けます

ランチを兼ねて向かったのは、まつだい「農舞台」です。ここは雪国の農耕文化を体感できる施設。世界でも有数の降雪量を誇る松代エリアならではの展示がみられます。

周辺に広がる里山にもアートがたくさん。せっかくなので、歩いて散策してみました。

草間彌生「花咲ける妻有」

まず目に入ったのは、草間彌生氏の「花咲ける妻有」。里山に溶け込むように咲くアート作品は、草間彌生氏のお気に入りの野外アートだといいます。

イリヤ&エミリア・カバコフ「棚田」

イリヤ&エミリア・カバコフの「棚田」も発見。越後妻有を象徴する風景・棚田で農作業をする人々の姿が彫刻で模られています。実はこれ、農舞台にある展望台から見るのがとっておきの楽しみかた。伝統的な稲作の情景を詠んだ詩と棚田の風景を重ね合わせて見る作品です。

越後まつだい里山食堂

山菜の和え物、おからコロッケ、ベジタブルケーキなど、身体に優しいメニュー

イリヤ&エミリア・カバコフの棚田を眺めながら。なんとも贅沢!

ランチは、まつだい「農舞台」 の中にある、越後まつだい里山食堂へ。地元で採れた山菜を中心としたメニューを、ビュッフェスタイルでいただきます。

旬の野菜を使うので、その日によってメニューはさまざま。この日は、青菜の白和えやクレソンの手巻き寿司、ひよこ豆のカレーなど、色鮮やかなお料理がビュッフェ台に並んでいました。お米はもちろん、地元で採れた魚沼産のコシヒカリ。一粒一粒がつややかで、噛むと甘みが広がります。大きなガラス張りの窓から棚田を眺めて食べるランチは、とっても贅沢。お腹いっぱいいただきました。(※ビュッフェは土日祝のみ)

ガラス張りのテーブル。いたるところがアートになっています

天井を見上げると……

実はこの越後まつだい里山食堂自体もアート。テーブルがすべて鏡張りになっており、天井にある、地元の人が撮影した越後妻有の美しい四季が映し出されます。

鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館

リノベーションされて蘇った「奴奈川キャンパス」では、さまざまな体験プログラムが開催されています

校庭には手漕ぎトロッコも。これも作品の一つ

午後は、「奴奈川キャンパス」や「ドクターズ・ハウス」へ。芸術祭の過去の人気作品を巡ります。

あたたかい、そしてちょっとホロリな物語。田島征三氏の絵本の世界へ

子どもも大喜びしそうな絵本や動くギミック

もちろん「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」へも。ここは小学校が丸ごと絵本になった美術館。実在した3人の生徒と学校に住み着くお化けが登場する、物語『学校はカラッポにならない』を題材にしています。作者は『ちからたろう』など日本の名作絵本を手掛けた田島征三氏です。

最後の生徒たちの落書き。館内はストーリー仕立てになっています

木造の校舎内には、流木をつかったオブジェが飾られています。落書きが残った教室はどこか懐かしく、子ども達の声が聞こえてきそう。誰もが持っているであろう、子ども時代やふるさとの記憶…ノスタルジックな気分に浸りながら、作品を後にしました。

ちなみに…庭には可愛らしいヤギの親子が住んでいます。隠れた見所の一つなのだそう。

越後妻有里山現代美術館[キナーレ]

ジミー・リャオ「Kiss & Goodbye」

越後妻有里山現代美術館[キナーレ] 撮影:木奥惠三

ジミー・リャオの「Kiss & Goodbye」を訪れたら、いよいよ最後のアートである越後妻有里山現代美術館[キナーレ]へ。

越後妻有里山現代美術館[キナーレ]の2階の展示フロア

ここは、原広司により2003年に建築された大地の芸術祭の拠点施設です。美術館の中心には大きな池があり、それを囲むように回廊が配置されています。

中心の池に描かれた絵は、レアンドロ・エルリッヒのアート作品。池と建物とアートが一体化して不思議な広がりを見せています。2階からみると違ったレアンドロの狙いが分かるので、ぜひチェックしてみて。展示室も見ごたえのある体感型のインスタレーションが並んでいます。

ここでしか買えない限定グッズにも注目

旅の記念に何か…そんな時は、2階のミュージアムショップへ。アーティストの作品をモチーフにした文房具や手ぬぐい、おしゃれな限定パッケージに入った新潟の名産品など、ここでしか買えないお土産がラインナップされています。

あっという間に夕方になり、帰路につきます。たっぷり遊んでもバスで駅まで行けるので帰りも快適。バスガイドさんとの別れを惜しみつつ、「また来ますね」と告げて新幹線で東京へ……。

自然と融合したアートに囲まれると、感覚が研ぎ澄まされて心が開放されたような心地に。1日のツアーですっかりリフレッシュして、旅行気分が味わえました。普段は公開されていない作品も見られるので、会期中に行けなかった人もぜひ「大地の芸術祭」の里、越後妻有へ足を運んでみてください。

「越後湯沢駅」はお土産天国!

新潟の名物がたくさん。ウロウロするだけでも楽しい

「越後湯沢駅」の改札をおりてすぐなので、ぜひ訪れてみて

「越後湯沢駅」に来たら、立ち寄りたいのがお土産コーナー。とにかく広く、笹団子や柿の種、かまぼこや干物など、新潟名物がずらりと並びます。さまざまな日本酒をお猪口でテイスティングできる「ぽんしゅ館」も人気のスポット。そのほか、お寿司屋さんなどのイートインできる店舗もあります。東京に戻る前に、覗いてみてはいかがでしょうか。

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