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コロナ禍で。108年の歴史ある学校を改修した秘境秋山郷の宿

07 July 2020

こんにちは。秋山郷結東温泉かたくりの宿の渡邊です。私達の働く越後妻有の秘境秋山郷にある108年の歴史ある廃校を改修した宿泊施設「かたくりの宿」を紹介させていただきます。

「かたくりの宿」は新潟県と長野県の県境、日本の秘境100選に選ばれた「秋山郷」内にある「津南町立中津狭小学校」が廃校となり1993年に宿泊施設に生まれ変わった場所です。昔の校長室は温泉となり、子供達が勉強した教室は客室になりました。

「秋山郷」とは秘境と呼ばれるほど山深い地域で、今でも昔ながらの生活様式が残り、毎年春にはツキノワグマ猟が行われるような山岳地域です。ただ、そのような山深い地域にある学校だったからこそ、運営面で難しい時代もあったようです。

「秋山郷」は極僻地だったため、明治25年から昭和11年までの43年間「義務教育免除地」に指定された時期があり、その43年間、地域の方達は行政に対して義務教育完全実施を求め続けながら、私設小学校を設置し自分たちの子供に対して寺子屋式の教育を続けてきました。

このような厳しい歴史をもつ学校だからこそ、地域の方達の学校への思いは大きく、閉校になった際も校舎の再利用が強く望まれ、宿泊施設に生まれ変わることになりました。

「かたくりの宿」はそのような背景のある、部屋数も7部屋しかない小さな宿です。

私達の住む地域は、自然の恵みが豊かな場所で、宿では地元の山菜や野菜をふんだんに使った、身体に優しいお料理をお出ししています。世界有数の豪雪地帯で育つ山菜は柔らかく、肥沃な大地から生まれる野菜や米は、力強い味わいがあります。

そんな素晴らしい素材の持つ本来の力、味を最大限引き出せるような料理作りを心がけ、味、彩り、栄養のバランスを調整しています。また、雪国ならではの伝統的な食文化を取り入れながら、私達独自の調理方法で、できる限り時間をかけ手間をかけてお料理しています。

宿の周辺の野山から摘んできた、季節の草花で食卓を彩りながら、お客様の大切なお食事を楽しんでいただけるよう、一皿一皿に心を込めて、皆さまにお届けできればと思っています。

今年初めから始まった、新型コロナウイルスの世界中での蔓延。世界中日本中の観光地が現在同じ状況ですが、私達も相当な打撃を今回のコロナによって受けています。

例年ですと4月下旬、ゴールデンウィークからの営業開始を予定していましたが、私達が今季の開館準備に取り掛かろうとし始めた頃、東京オリンピックの延期が決まり、あれよあれよという間に緊急事態宣言が7都府県に発出され、私達も4月10日には今季の営業開始日を延期する事に決めました。

営業開始ができた6月までの間はこれからどうなるのだろうと悶々とした日々を過ごしていました。私達のような観光で生活する人間にとって、このコロナウイルスに対しては正直、全くと言って良い位どうしたら良いか分からない気持でした。

今まで「秋山郷」にお越しいただくお客様は、基本的に都会にお住まいの方が中心で、また最近は外国のお客様も少しずつ増えてきていました。

そんな状況の中でのコロナウイルス。私達が今まで積み上げてきた事を全否定され、全て崩れていくような感覚でした。

そして、やっと6月になり、お客様をお迎えする事ができるようになりました。久しぶりにお客様の対応をさせていただいた時は、今までに味わった事がない、温かい不思議な気持ちがこみあげてきた事を覚えています。

まだまだ社会状況がこの先どうなっていくのか全く予測がつきません。今までのような形では上手くいかない事が、沢山出てくるかと思います。そんな中で私達ができる事はとてもシンプルな事しかないなと思っています。この大変な状況の中でもわざわざ「かたくりの宿」を選んで来ていただけるお客様一人一人に対して、必ず満足していただける時間を提供していく事。そしてこの新型コロナウイルスで疲弊している皆さんの心を、私達のサービスを通して少しでも緩和することができればと思っています。

先の見えない時期ですが、私達なりに精一杯元気を出して、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。ぜひ、秋山郷の大自然に癒されに遊びにいらしてください。

秋山郷結東温泉かたくりの宿 渡邊泰成

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