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FC越後妻有「農業×サッカー」とは?越後妻有での1年目

13 February 2020

越後妻有での1年目

みなさんはじめまして。FC越後妻有に所属する髙橋です。

昨年10月に入社し、越後妻有へ来てもうすぐ半年が経とうとしています。

十日町は父の出身地で、現在は祖母が暮らしています。幼い頃から慣れ親しんだ地であり、物心がつく頃には「大地の芸術祭」が行われていました。豊かな自然と街に点在するアートは身近な存在であり「ゲイジュツ見に行こう!」とこちらに住む幼馴染と廻ったこともありました。2018年8月、大学生だった私は長期休暇を利用してアート巡りを計画し、その時にホームページで目にしたのがFC越後妻有によるサッカーワークショップでした。そして、サッカーワークショップの参加から約1年後。私は選手として、この地にやって来たのでした。

今回はそんな私の目線からFC越後妻有で感じたことを綴りたいと思います。

2019年、FC越後妻有に入団した髙橋咲希選手

活動拠点である奴奈川キャンパス(十日町市・室野)は、「大地の芸術祭2015」で開館した廃校校舎を活用した施設です。元々は保健室だった場所をロッカールームに改修するなどして利用しています。施設内には教室ごとに作品が並んでいます。グラウンドの天然芝は、ここにサッカーチームができると話があがった頃に地元の方々が植えてくださったそうです。現在はFCメンバーで手入れをしています。

シーズン中の様子はこんな感じです。

朝9時。空と山の青に囲まれながら、めいっぱい翼を広げて羽ばたく鳥たちを横目に、練習がはじまります。私はこの奴奈川キャンバスの景色が大好きです。現在は週3日の午前中が練習日で、パスワークにシュート練習、フィジカルトレーニングをこなしながら2時間ほど汗を流しています。ここへ来る前は「3人でサッカーができるのだろうか」という素朴な疑問がありましたが、コーンや元学校ならではの用具を人に見立てたり、工夫によって今の環境でできる最大限の内容に取り組んでいます。

日々の心の支えは、ここにしかない形で直接もらう応援です。練習中にはグラウンドまで地元のお母さんが袋いっぱいの野菜を届けてくださったり、外の道にランニングへ出た時には、すれ違う軽トラックから近所のお父さんが声をかけてくれます。(夏の練習後に食べたもぎたての冷やしトマトは、今まで食べたどんなトマトよりも美味しかったです!)

朝9時、めいっぱい翼を広げて羽ばたく鳥たちを横目に、練習がはじまる。

練習がある日は午後から、そうではない日は朝から田んぼに出ます。「まつだい棚田バンク」の一員として、後継者不足で担い手がいなくなった田んぼの耕作を行っています。初めて触るビーバー(刈払い機)や耕運機、電波が届かない山奥での作業に最初は戸惑いもありましたが、ふと見上げた時に視界いっぱいに広がる美しい棚田を見て「この風景を守るためにできることを頑張りたい」と強く感じました。棚田バンクで関わらせていただいている農家の方々との交流も、「農業×サッカー」に向き合う大きな原動力です。

初めての米作りでは感動がありました。刈っても刈っても生えてくる雑草に足を踏み入れると飛び出してくる虫、田んぼを荒らしにくる獣。雨の大切さも知りました。そうした過程と労力のつまったお米が炊きあがった瞬間のことは、この先も忘れることはないでしょう。また、様々な困難にも負けずに育つ稲は私に生きる強さを教えてくれました。

初めて触るビーバー(刈払い機)

FC越後妻有は、なでしこリーグ参入を目指しています。

今はまだ選手が3人ということで、同じ街で活動する女子サッカーチーム十日町JACKと合同で新潟県リーグを戦っています。一日でも早く人数が揃い、単独チームでの出場が叶えば、県リーグや北信越リーグを勝ち抜くことで、その先にあるなでしこリーグが見えてきます。

現在、日本の女子サッカー選手の多くは、働きながらクラブチームでサッカーに取り組み、仕事が終わった後練習に励んでいます。その一方で、私たちは「農業実業団チーム」として、トレーニングや試合の日程に合わせた仕事調整が行えるなど、サッカー中心の毎日を送ることができています。トップリーグのチームを見ても類はないのではないでしょうか。

「農業×サッカー」。プロサッカー選手として生活できる恵まれた環境。FC越後妻有は新しい形に挑戦するチームです。

私たちには見えています。試合会場に軽トラックが押し寄せ、おじいちゃんおばあちゃんが駆けつける――そんな未来が。(試合に負けたらトマトがもらえないかもしれません…。)

サッカーをプレーし、日本一といわれる棚田を守ることで、この越後妻有という地に笑顔を創りだしていきたいです。

FC越後妻有

女子サッカー選手が移住・就農、プレーしながら棚田を保全。

「FC越後妻有」は、女子サッカー選手が棚田の担い手として移住・就農し、プレーする農業実業団チーム。大地の芸術祭から派生した本プロジェクトは、プロとしてサッカーをしながら、里山で暮らすライフスタイルの提案であり、過疎高齢化で担い手不足の棚田を「まつだい棚田バンク」を通して維持する、日本全国見渡しても類を見ない、先駆け的なプロジェクトです。 近い将来でのなでしこリーグ参入を目指します。

テキスト:髙橋咲希

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