新潟から世界を捉え、21世紀の美術を考える
大地の芸術祭公式WEBマガジン

運営 / 越後妻有の舞台裏から

田島征三、韓国へ。鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館 10周年を迎えて

29 December 2019

ある日、韓国の絵本翻訳家の方から連絡がありました。なんでも、韓国の済州島で、絵本と木の実の美術館のような、地域住民と一緒に絵本美術館を作る構想があり、田島征三さんの講演と、美術館の運営の話もして欲しいとのこと。そこで、田島さんと一緒に12月の初旬に、韓国講演3か所の巡業に行って来ました!

1か所目の講演は2日間にわたり、初日はインドのタラブックスさんの講演、2日目は田島さんと豪華ゲスト陣のなか、行われました。田島さんは、越後妻有の雪深さや、自身の空間絵本アート、また韓国の絵本作家さんと鉢のおばあちゃんの交流の話をし、さまざまな立場の聴衆は、これから行うプロジェクトに対し熱い思いで聞いていました。私は、大地の芸術祭の取り組みや、美術館を運営するNPOの役割について少しお話をさせてもらいました。

その後は、地域の子どもたちを招待した木の実のワークショップで一緒に制作。「これから君たちは芸術を作るんだ!ルールは一つ、人の真似をしてはいけない。木の実にやさしく話かけながら作るといい。」と田島さんのアドバイス。はじめ緊張していた子どもたちはどんどん制作に集中し、自分たちの芸術作品を創り上げました。

 

2か所目の講演は、軍浦市で女性市民団体主宰の講演。3か所目は、金浦市で産婦人科主宰の講演会。田島さんの人気は本当に凄く、どの会場もたくさんの人だかりで、笑いあり、涙ありの講演は大盛り上がり。サイン会は長蛇の列。また、会場ではたくさんの方の心温まるおもてなしや心遣いに感動し、韓国の方の優しさに触れあうことができました。

田島さんのお話から、作家として絵本を創り上げる大変さや、絵本と木の実の美術館とその周りで協力してくれた人たちとのエピソード、命の尊さとそこから表現する作品に対する想い、さらに国や時代を超えた人の繋がりから生まれた交流について知ることができました。そして、私の大好きな絵本『ぼくのこえが聞こえますか』の読み聞かせでは、韓国語の朗読にもかかわらず、私も涙がポロリ。

今年で10周年の節目を迎える絵本と木の実の美術館。この10年、さまざまな出来事が起き、たくさんの方たちに支えられた美術館。そこから培ってきた経験や繋がりが国境を越え、たくさんの地域の模範でいられるよう、また一から地に足を着け、がんばっていかなければいけないと感じた韓国巡業でした。

絵本と木の実の美術館 担当 三輪真弓
(NPO法人越後妻有里山協働機構)

施設紹介

鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館

廃校になった小学校が、作家・田島征三による体験型「空間絵本」美術館として2009年に開館。実在する最後の生徒3人が主人公となり、空間を使った絵本のように構成されました。校舎中に配したオブジェは、伊豆半島の海辺と日本海で集めた流木や木の実などの自然物に絵具を塗ったもの。作家は、かつてこの学校で活き活きと生活をしていた生徒や先生、おばけまでをも再現しようとしました。

住所:〒942-1402 新潟県十日町市真田甲2310-1
電話番号:025-752-0066
公式HP:http://ehontokinomi-museum.jp/
≫絵本と木の実の美術館facebookはこちら

営業期間:4月下旬~11月下旬まで(冬季休業)

 

Photo by ISHIZUKA Gentaro

PROFILE

田島征三

1940年 大阪府生まれ。幼少期を高知県で過ごす。1969年 『ちからたろう』にて第2回BIB世界絵本原画展金のりんご賞。その他受賞多数。2012年 第5回越後妻有アートトリエンナーレ「どうらくオルガンちちんぷいぷい」作品出品。2013年 香川県大島で、ハンセン病の元患者の療養所にて「空間詩・青空水族館」作品出品。

つながる

最新ニュースやイベント情報、越後妻有の四季の様子、公式メディア「美術は大地から」の更新情報などを大地の芸術祭公式SNSアカウントで発信しています。