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サポーターからプレーヤーへ 越後妻有での新たな道

10 June 2020

「楽しむ気持ち」を思い出させてくれたこの地で踏み出す新たな一歩

はじめまして。4月からFC越後妻有のメンバーとしてこの地にやってきました、小林と申します。神奈川県出身で、大学を卒業した後は東京で映画やCMの美術スタッフをしていました。はてさて、なぜそんな奴が越後妻有へ来たんだい?という声が聞こえてきそうですが、きっかけは「大地の芸術祭」公式のサポーターであるこへび隊の活動に参加したことでした。

こへび隊として三省地区の運動会に参加。

笑顔の自分と再会した、こへび隊での活動

都会の目まぐるしく変わる状況の中で仕事をしていた私は、心身ともに疲れ切ってしまい、昨年の春に会社を辞めました。時間に余裕ができたので、今までできなかったことをしようと考えました。その一つがこへび隊での活動だったのです。大学生の時に大地の芸術祭に来たことがあり、その時からこへび隊のことが気になっていました。活動中は自然と笑っている自分がいました。仕事の忙しさから、楽しむ気持ちを忘れてしまったと思っていましたが、地元の方の心の温かさやパワフルさに触れ、大地の芸術祭を地元の人やサポーターのみんなで盛り上げていくチームワークを強く感じる中で、笑顔になっている自分に驚きました。東京に戻った後も、また行きたいと思う魅力が越後妻有の地にはあると感じました。

盆踊りの仮装を制作中。

都会から自然豊かな里山へ

そんな中、農舞台でたまたまFC越後妻有のチラシを見て、高校生の時にハンドボールのキーパーをしていたとNPOのスタッフの方にお話ししたところ、監督からご連絡をいただき、一緒にサッカーをやってみないかと誘われました。最初は悩みました。まず、サッカーの経験がなく、ルールもよく知りません。大学生以降は運動とは縁がなく、スポーツ自体のブランクが10年以上あります。移住するというのもまた大きな変化です。都会での生活が好きという訳ではないですが、長年住み慣れた環境を離れ、今まで知らなかった土地に行くには勇気がいります。何にせよ、今までしてきた生活とは何もかもが一変してしまうのです。しかし同時に、思い切って飛び込んでみたらいいんじゃないか、と思う自分もいました。ちょうど新しい道を探していた時期でしたし、大切な「楽しむ気持ち」を思い出させてくれた地元の人たちの仲間になれたらいいなと思ったのです。よく考えた末、後者が勝ち、私は新たな心と共に越後妻有の地にやってきました。

FC越後妻有のメンバーと共に。(右から一人目が小林舞さん)

初めてだらけの里山暮らし、新米の自分から立派な稲を目指して!

実際に住んでサッカー×農業をしてみて、初めてのことばかりでもちろん戸惑うこともありますが、日々勉強しながら楽しくやっています。

初めての耕運機の運転!

例えば農業の面では、田んぼに足を取られてなかなか抜け出せなかったり、今まで使ったことのない道具や機械の扱い方を覚えたりと、大変なことは盛りだくさんです。泥や匂いのきつい肥料にまみれ、しんどい体勢での作業が続いたりして、もっと楽にできないものかと思ったりします。しかし、地元の方々が、アドバイスをしてくださりながら、助け、見守ってくれています。先日も田植え機が田んぼから出られなくなってしまったところに地元の方が通りかかり、知恵を貸していただき、無事救出という一幕がありました。美しい棚田の風景を守り、おいしいお米をお届けする一員として、これから頑張っていきたいと思っています。

手植で使う、田植枠。田んぼ表面を転がして苗を植える目印を付けます。

地元の応援団である案山子隊の皆さんや、現地スタッフ総出で田植えをしました。

サッカーの面では、奴奈川キャンパスでトレーニングをしていく中で、地元の方々の温かな応援を感じています。走っているとおばあちゃんが声をかけてくださったり、練習中にグラウンドを訪ねてきてくださって「暑いねぇ。頑張ってるね。」と言ってくださるおじいちゃんがいたり、お野菜やお菓子を差し入れてくださる方がいたりします。こうして地元の方々の温かさに触れるたびに、越後妻有に来るきっかけになった、サポーターだった時の自分の感情―「楽しむ気持ち」と、を思い出しています。

地元の方から白菜をいただき、嬉しそうなメンバー。

こうして、先人たちが大切に守り続けてきた棚田の新たな担い手として、農業にサッカーに奮闘する毎日を送っています。芸術祭が開催されるようになったら、楽しみに来てくださるお客さん、サポーターであるこへび隊&案山子隊のみなさん、地元の方々とまたお会いしたいです。まだまだ新米の私ですが、稲のようにぐんぐんと成長していけたらと思います。

守っていきたい、越後妻有の棚田風景。

FC越後妻有

女子サッカー選手が移住・就農、プレーしながら棚田を保全。

「FC越後妻有」は、女子サッカー選手が棚田の担い手として移住・就農し、プレーする農業実業団チーム。大地の芸術祭から派生した本プロジェクトは、プロとしてサッカーをしながら、里山で暮らすライフスタイルの提案であり、過疎高齢化で担い手不足の棚田を「まつだい棚田バンク」を通して維持する、日本全国見渡しても類を見ない、先駆け的なプロジェクトです。 近い将来でのなでしこリーグ参入を目指します。

テキスト:まつだい棚田バンク・FC越後妻有 小林舞

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